第10回 賃貸住宅とペットについて その1

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空前のペットブームですね!
“子供の数よりペットの数の方が多い”、と言われてずいぶん時がたった昨今、コロナ禍で在宅時間が多くなったことも、更にペットブームの後押しをしているとか。

賃貸(集合)住宅とペットに関して、正直私は大家として相性が決していい、とは思っておりません。それには、当然理由がありますが、それは後述。

とはいうものの、”ペット可”の賃貸住宅は確実に増えております。その理由の一つは、日本の人口・世帯数とも減少のステージに入ったにも関わらず、ハウスメーカーによる実需を無視した賃貸住宅建設の暴走が挙げられます。これにより、日本全国で空室となっている賃貸住宅は450万戸にも上ります。にもかかわらず、年間20-30万戸の賃貸住宅が建設され続けております。

人口・世帯数も原則増えることはありませんから、ハウスメーカーの口車に乗ってしまった大家は、“ペット可”という条件を打ち出しました。最初に書きましたように、13歳以下の子供の数より多いペット、それでいて、昔は”ペット可”の賃貸住宅は少なかったですから、空室を埋めるための手段として”ペット可”が持てはやされました。

ペットと賃貸住宅の相性が基本的によくない理由は、まず、ペットは個人の趣味の一つということです。飼い主さんにとっては、家族の一員であっても、ペットに興味がない人、あるいは、嫌いな人にとっては、ただの動物です。

半面、賃貸(集合)住宅はいろいろな価値観を持った方々が住まわれます。この2つの条件が折り合うことは、かなり難しかった、と言えます。

とはいえ、ペットの数がこれだけ増えると、それを容認する方々も増えるわけで、結果、”ペット可”、という賃貸物件が出現してきた、と私は見ています。多分、10年位前からですかね?

ここまでは、ペットに否定的な意見を申しましたが、”ペット可”も使いようによっては、いい賃貸の住宅環境を創造する手段となりえます。

住宅において、一番大事なことは、地域とのコミュニティ。賃貸住宅は、多くの場合集合住宅となりますから、その集合住宅が地域コミュニティの最小単位となります。そのため、“規格型賃貸”という考え方が生まれ、“バイカーズ専用賃貸”とか、“音楽家向け賃貸”という企画が展開されました。

“ペット可”の賃貸も、もし、入居者様全員がペットを飼われているのでは、ペットを核としたコミュニティが生まれ、非常によい住環境となります。ペットを通じて、お隣さん同士の会話も弾むでしょうし、例えば短期の外出時に互いにペットの面倒を見る、という展開もあり得るでしょう。

しかし、”ペット可”賃貸は、あくまで”ペット可”であって、全員がペットを飼っているわけではありません。”ペット可”ですから、動物が嫌いな方は住まわないまでも、折角ペットという共通の話題があるのに、その輪には入れない・・・・ちょっと残念ですね!

であれば、“ペット専用の賃貸住宅、ってどう?”と思うわけです。私はこのアイディアを7-8年前に持ち、そのような賃貸があるのか、専門誌の編集長に聞いてみたところ・・・・当時、一棟だけありました! 場所はどこか覚えていないのですが、鉄筋コンクリートで5階以上、企画ものとしてはかなり大規模だったと記憶しております。

さらにそのオーナーは、コミュニティの強化を図るために、一階には動物病院をテナントとして探してきたそうです。

その物件が今どうなっているか、残念ながら分からないのですが、もともと相性が悪かった賃貸住宅とペットも、これからは、生活を豊かにする両輪として、上手く合体出来るといいですね!