第51回 賃貸を取り巻く昨今の問題 その2・・サ高住に群がる悪質仲介業者

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先月に続き、最近聞いた賃貸に関わる問題です。

サ高住とは、“サービス付き高齢者向け住宅”の略称ですね!

高齢者が人口の約30%を占めるようになった今、老後は“老人ホーム”に入ろう!とお考えの方も多いと思います。“

最近は、老人ホームに加え“サ高住”という言葉が良く聞かれるようになりました。実はこの2つには大きな差があります。利用者の立場として、前者は高度なサービスを必要とする方が利用し、後者はまだなんとか自立した生活が出来るが、見守り等が必要な方が利用すると言えます。

サービスに対する費用の違いは、前者は“高度なサービスを利用する権利に対して費用を支払う”のに対して、後者は、実は“賃貸住宅=家賃+サービスに対して費用を払う”ということなのです。つまり、サ高住の契約は“賃貸借契約”で、契約関係の法令は新旧借地借家法、監督官庁は国交省となります。因みに、前者の監督官庁は厚労省です。

長くなりましたが、ここまでが前段です。

つい最近サ高住について聞いた報道ですが、サ高住を仲介する業者が、入居希望の高齢者を紹介するにあたり、100万円、120万円といった高額な仲介手数料を得ているということです。それを支払うのは、サ高住側です。

皆さんが賃貸住宅を探す際、仲介会社を使いますよね?そして、仲介手数料は、家賃の1か月と法令で決まっております。私が最初にサ高住の高額な仲介料の報道を聞いた際、“賃貸借契約なのだから、仲介手数料は法令で家賃の1か月と決まっているはず”と違和感を感じました。

賃貸住宅を入居希望者に仲介するには、国家資格である宅建士が介在することが法令で決まっております。皆さんも、“重要事項説明”というのを宅建士から説明を受けましたよね?

サ高住を高額の仲介料を取って行っている業者は、宅建士ではありません。これは、賃貸借住宅の仲介という観点からは、完全に違法行為です!

と思って調べてみましたら、平成29年に既にこの問題は顕在化していて、経済産業省がその違法性についてNewsReleaseを出しております。結論から申しますと、平成29年の段階では、違法性はない、とのことでした。

このNewReleaseの内容をもう少し突き詰めると、賃貸業においても似たような業態が最近出て来たことに気が付きました。賃貸住宅の法人契約で最近我々の仕事に関わって来た“社宅代行”です。

社宅代行はその名の通り、もともとは法人の社宅業務=人事の仕事を“代行”するのが仕事で、法人から報酬を得ていました。ところが今は、法人からの依頼を“仲介会社に情報を提供する”と言う形で、“手数料”も取っています。これは法的に定められた報酬ではなく、あくまで民事上の契約となります。

 

私が問題とした“サ高住の仲介手数料”というのも、法律上はこの“手数料”に当たる、というのが、平成29年の経産省の見解です。

なぜ、サ高住側は高額な手数料を払ってまで、入居者(高齢者)を欲しがるのでしょうか? それは、介護度が高いほど、介護保険により高額な補助金を得ることが出来るからです。ですから、全ての紹介者に対して高額な費用を払っている訳ではなく、自分の利益につながる客(入居者)を紹介してもらう為に100万円と言う高額な費用を払っているのです。

社宅代行の手数料は、完全に民民の契約事ですが、サ高住の高額な手数料の原資は、我々の税金(介護保険料)です。平成29年当時の手数料の絶対額がいくらかは承知していませんが、今それが改めて問題になっているということを、納税者は知っておくべきと私は思います。

 

この問題、社会全体がもう少し継続して注視する必要があると思います。